痴呆をきたす疾患の鑑別に要する臨床検査

より詳細な検査

髄液中のTau蛋白、リン酸化Tau蛋白、アミロイドβ40、アミロイドβ42、血漿のアミロイドβ40、アミロイドβ42、ApoE遺伝子、血漿アミロイドβ自己抗体

Alzheimer病

APP(アミロイド前駆体タンパク質)、presenilin遺伝子異常(PS1、PS2)

家族性Alzheimer病、家族性アミロイドアンギオパチー

Tau遺伝子異常

FFTDP-17

CystatinC、Abri遺伝子異常

家族性アミロイドアンギオパチー

Notch3遺伝子異常

CADSIL

遺伝子異常（CAGn、CTGn）

Huntington舞踏病、DRPLA、myotonic dystrophy

CSF-14-3-3蛋白、尿prion、prion遺伝子異常

Creudtzfeldt-Jacob病、GSS

遺伝子検査

Adrenoleucodystrophy、Pelizaeus-Merzbacher病、Cerebrotendinous xanthomatosis、高シトルリン血症

薬物血中濃度

薬剤性脳症（レセルピン、チアプリド、スルピリド、フェノチアジン系薬物、ブチロフェノン系薬物、抗コリン薬、脳代謝改善薬、メトクロプラミド、H₂遮断薬、5-FU、カルモフール、テガフール、メソトレキセート）、重金属（鉛、マンガンなど）、抗不安薬、眠剤、有機化合物中毒

ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体

脳血管性痴呆、脳腫瘍、多発性硬化症

Hu抗体、抗Ma2抗体、HHV-6

paraneoplastic syndrome、非ヘルペス性辺縁系脳炎

皮膚生検

Intravascular malignant lymphoma

腫瘍マーカー、プロラクチン、HCG、α-fetoprotein、NSE、ProGRP、IL-2R

脳腫瘍、転移性腫瘍、悪性リンパ腫

脳血管造影

脳血管性痴呆、脳腫瘍

脳システルノグラフィー

正常圧水頭症

心筋MBGシンチグラフィー

Lewy小体型痴呆

PET

脳血管性痴呆、Lewy小体型痴呆、前頭側頭型痴呆

蛇足

以上の検査には、保険未収載のものもあるので注意。

• 血算は血液検査の基本。
• MCV高値では、ビタミンB12、葉酸欠乏と欠乏がもたらす疾患を考え、胃、小腸の切除の既往、飲酒歴を確認する。問診だけでなく、腹部を診察するのが良い。
• MCV高値はMDS、銅欠乏性貧血を疑うきっかけになる。
• 肝疾患、腎疾患、またはその両方の既往がある認知機能障害は、アンモニアを必ず測定する。アンモニアが基準値上限を下回っていても、必ずしも高アンモニア血症による認知機能低下は否定できない。
• 尿素窒素（BUN）、クレアチニン（Cr、Cre、Crea）、尿酸（UA）の高値は腎機能低下を疑うが、認知機能障害を疑う年齢層では筋肉量が低下しており、Crの上昇を認めないことも多い。甲状腺機能亢進症ではCr低値をよく見かける。
• 甲状腺機能低下症は偽痴呆の代表的疾患。
• 亜急性連合性脊髄変性症（SCDC）を来たしているビタミンB12欠乏に対し補充を開始するならば、葉酸も同時に投与すること！（ビタミンB12が補充されると、正常域にあった葉酸も消費され、欠乏状態に陥る）。葉酸欠乏もSCDC様の病態を呈するが、VB12欠乏のSCDCより治りにくく予後不良。
• 悪性腫瘍の既往を問診で聴取したならば、化学療法を受けたか必ず訊ねる。5-FU、カルモフール、テガフールによる白質脳症を疑うきっかけになる。しかし、残念ながら、患者はどんな抗がん剤を使ったかまで覚えていることは少ない。

参考

日本内科学会雑誌 第94巻 第８号 38p